学習塾業界においてM&A(企業・事業・教室単位の売買)は日常のニュースになっています。
今後は多くの企業の成長戦略においても、撤退戦略においても、事業承継においても、
M&Aの活用は重要な意味を持つことになるでしょう。
しかし、学習塾のM&Aにおいては、業界特有の特性が存在するため、
一般的なM&Aと比較して様々な注意点が存在します。
学習塾のM&Aにおける注意点は主に以下のものが上げられます。
(1)人材の能力判定と維持・定着
学習塾の場合、講師・社員が企業の業績を左右する重要な要素となります。
講師の離脱により生徒数が数十%減少することも珍しくありません。
M&A後に人材流出が起きた場合、教室の存続や成長に影響を与える可能性があるため、
人材の維持や定着の可能性について十分に配慮する必要があります。
また学習塾経営のベースとなる「人材」は、業績アップの起爆剤にも、企業経営を圧迫するコストにもなるため、
人材の質の判定も大切です。
(2)売上や生徒数のみに依存しない、評価価値の正確な算出
M&Aにおいては、買収対象企業の評価価値を正確に算出することが重要です。
学習塾企業の場合、売上規模、教師の質や生徒数、教室数、土地や建物の所有状況などが評価価値に影響を与えますが、この中で注意しなければならないのが、「売上」「生徒数」です。
学習塾のビジネスモデルの構造上、生徒数の数十%は翌年には「卒業」ということで顧客の入れ替えが起こります。
この卒業退会のリスクを想定し、一方で「入塾者数」がどれだけ安定できているかなどを価値算出の際に読み込んでおかなければ、正しい評価価値を算定できない恐れがあります。
(3)学習塾のブランド・地域での競合状況の把握
学習塾のM&Aの中でも、進学塾のM&Aにおいては、その塾が持っている「ブランド」「合格実績」の価値が大きくなります。
買収対象の学習塾が地域内でどれだけの合格実績を現在保持しているのか?
競合塾と比較した場合、合格実績の伸び率はどの程度か?
近年の買収対象の塾の地域内での評判はどのような状況か?
などを正確に判定する必要があります。
特にこの進学実績やブランドは、買収後に一朝一夕で改善できるものではないため、思わぬリスクを抱えることにもなりかねません。
(4)法的な問題の確認
リーガルチェックはM&Aにおいては当然ですが、学習塾のM&Aに際しては、
特に個人情報保護法や労働基準法などについて注意しておく必要があります。
また、これ以外にも著作権や消費者クレームの有無・発生状況などにも注意が必要です。
さらに言えば、フランチャイズ契約が関係する場合、そのフランチャイズとの契約関連も意外なリスクとなりますので注意しましょう。
以上、簡単ではありますが、学習塾のM&Aにおける注意点(主に買収側)をまとめさせていただきました。
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